逸脱せよ!


by amnesiac7
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父カエル

再会は突然だった。
月明かりの下、海岸通りをふらふらと散歩していると、前から予期せぬ人物が現れた。
「よぉ、ひさしぶりっ!」
3ヶ月前に死んだ父、そのひとであった。

玄関で泣き崩れる母、絶句し、口をパクパクさせている妹。
やはり誰がどう見ても、ボクの父親。一家の長の帰還である。
「あの世がヒマ過ぎて、ちょっくら帰ってきたんよ」
普通に晩酌しながら、遅い夕飯をとる父。
死んだはずの父がメシを喰っている(どういう仕組みだ?)。だけど"影"はない。そして脈もない。
「脈なしですわぁ(笑)」
ギャグにもなっていないのに、自信満々の笑みを浮かべ。やはり、ボクの父でまちがいない。
(このフレーズは、このあと数日、何かにつけて出てくる父のマイ流行語となった=ウザイ)

数日が経過し、家族の関係はどんどんと軋(きし)んでいった。
この状況をなんとか引き伸ばそうと、絵空事のようなコミュニケーションを続ける母。
独り、一点を見つめ、ブツブツとなにやらつぶやき続ける妹。
ボクにしても、やはりどこかおかしく、声のボリュームが調節できなくなったり、自分でも自分がよくわからない状態。にも関わらず、父だけが元気に"居座り続けている"。

「ん、俺をハネた犯人だって?・・・あれだよ、あれ。坂の上の酒屋の息子。ほら、お前の同級生の---」
ここ数日、気が動転していたらしく忘れていたのだが、いつもの晩酌のなか、ふと思い出し訊ねたところ、とんでもない答えが返ってきた。
父は、3ヶ月前の大雨の晩、見通しの悪い崖沿いの道で車に跳ねられ、ひき逃げされ、死んだのだ。
地方の田舎町。大雨と、あまり熱心ではない鑑識たちによって、あっというまに無くなった事件の証拠。
ボクらにしても、"この父"が突然いなくなったので、どこか雲でも掴むような話で放心し、あっという間の3ヶ月だったのだが、事件は思わぬところから解明された。
「でも彼のことは、あまり責めんでやってくれ」
意外なことば。自分を殺した犯人に対し、ひどく軽い口調で免罪を?
「彼、俺を跳ねてから最近まで、ぜんぜん寝れてないらしいんよ」
おいおい、どこで仕入れてきたんですか、そんな話。
「とにかく、あそこの爺さんが、ゆるしてやってくれ、ゆるしてやってくれ、とうるさくてなー。死んでまでめんどくさいのはイヤやから、まぁ、とにかく無かったことに・・・」
酒屋の息子、ボクの同級生、の祖父。その爺さんならたしか数年前に亡くなっていたはず・・・。
にしても、自分を殺した相手を許してやってくれ?というか"無かったことに"だって??
「とにかく死んでもうたもんは、しゃあないんや。何をどないしても、どないもならんやろ」

妹が完全に壊れた。
死んだ人間が家に居続けるというのは、たとえ実父でも、当たり前だが無理のある話だ。
母にしても、奇妙な笑顔がはりつき、常軌を逸したギャグを平気で言うようになってきた(母まで!)。
彼(父)も自分が居続けることが、家族には良くないことを理解していたが、
「といっても、どこにも行く宛ないしなぁ。かといって近所をうろつくのもマズイやろうし、往生しまっせ・・・て往生でけへんから、往生してるんやがなっ!て禅問答みたいやな、アハハ」
とにかく成仏してもらわなければいけない。
とりあえず、塩など頭からかけてみたが、なんの効果もない。
どうすればいいんだ?

父が死んだ崖沿いの道。事件現場には比較的新しい花が添えられていた。
「ん、俺のワンフー(ファン)でもいるのか?駅前のスナックのKちゃんかな?」
自分が殺された現場に着ても、このノリ・・・。
しばらくすると車が止まる音が聴こえ、小脇に新しい花をたずさえた男が現れた。
「あっ!」
ほとんど同時に。声を出したのはボクと男。すなわち酒屋の息子でボクの同級生のTだった。
「実はオレ・・・」
「言わずとも知ってる・・・つもりでいる」
「なんで・・・?!」
「いや・・・この男見て気づかないか?」
「ん・・・どなたなんだ?」
父はニヤリと笑い、ボクの方を指差し、「コイツの父です」
「ああ、うん・・・えっ、ええあぁ・・???」
「お前、ウチの親父跳ねといて、顔もわからないのか?」
「ど、どういうことなの、これ?!」
ボクは父の足元を指差し、次にボクと彼の足元を。
「わからないか?」
「・・・わからない」
「・・・影がないだろ」
「影がない・・・影がないね、え、影がないっ?!」
父は腕組みしながら、満足げに何度もうなずいている。
「ただ、お前のじいちゃんが・・・」
「え、じいちゃんが何?!」
「いや、いい・・・」
「何が・・・て、あっ!!!」
見ると、親父がゆっくりと薄くなっていく。
「いやぁ、おもろいもん、見させてもらいましたわ。これはあの世でも、ちょっとしたネタになりそうやわ」
「・・・逝くのか、親父?(唐突だな!)」
「え、そうなの?」キョロキョロと自分の身体を見回し、「・・・・たぶん、ほな!」
スーっと消えた、あっけなく。このどうしようもない空気をそのままにして・・・。
「親父さん・・・オレのために出てきてくれたのかな?」
「んなわけねぇだろ・・・いや、わからんが・・・」
「オレ、自首するよ」
「え・・・なんで?」
「なんでって・・・」
「ああ・・・そうか」
残されたふたり。あんな男が舞台をハチャメチャにしたあと。茶番劇を演じるしかない。
「にしても親父さん、いろんな方言が入り混じってたな。どこの出身なの?」
「・・・いや、ここが地元だよ。あれはあれでおもしろいというか、なんかの愛嬌のつもりらしく・・・」
突然、滂沱のごとき涙が頬をつたう。何かがようやくひと段落。自分なりに一巡し・・・ところで、母と妹のそれはどうしたら良いのだろうか?
事件は解決したが、いろんなものをひっくり返したまま、父カエル・・・(?)


断片小説第3弾
にして、すでにこれ短編小説じゃねぇかよ!w
短編とまではいかなくても、ショートショートくらいのサイズ
オレにしては、長々と書きすぎてしまった・・・
もっとすっきり・・・つーか、また予想とはぜんぜんちがうオチに・・物語創作って、ほんとむずかBです

追記:ちなみにこの親父、酔っ払って、崖の上の名もしらぬ花を摘もうと崖をよじ登り、転がり落ちて気絶しているところを轢かれたのがほんとの死因
なのですが、このエピソードを挿入すると話がさらに長くなるし、デタラメすぎるので今回は割愛^^;
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by AMNESIac7 | 2008-12-06 23:15 | 断片小説