逸脱せよ!


by amnesiac7
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優秀な精神科医

「自分のことを完全に正気だと言い切れるというのは、なんらかの狂気に憑りつかれている証拠です」
九州は南部の とある大学病院に、非常に優秀と謳われている精神科医がいる。
彼にかかった患者たちは、患者というよりも信者のようになり、彼にすべてを依存するようになるという。
「優秀な精神科医ほどすぐに壊れる。患者を自己に投影し、シンクロし、悩み、苦しみ、やがてというわけです。優秀な精神科医というのは、いわば消耗品なのです」
--長く精神科医を務めるには、ある程度患者と距離を置かなければならないということですね。あなたは非常に優秀な精神科医であるといわれていますが、そのへんは上手くコントロールできていますか?
「わたしに関しては、ご安心ください。わたしはこの地方では有名な神降しの家系の生まれでして、いわゆる霊媒体質というやつなので、そういった投影、憑依の類いには生まれつき耐性が高いのです」
飛び出したセリフに、わたしは思わず絶句した。
40歳代にしては、艶のある顔立ち。抑揚はあまりないが、すばらしい美声と流暢なことば使い。
インタビューを開始して15分ほど、わたしはすでに彼のファンになりかけていたところだったが、この言葉で一気に目が覚め、困惑した。
--そうだったのですか・・・では、少し話が変わりますが貴方は治療の際、あまり治療薬の類いを処方しないと聞きますが、それはなぜですか?
「人間には耐性というものがあります。この耐性はレセプター、いわゆる受容体の増減によって生まれるのですが、薬物などの投与は劇的な効果を現す代わりに、これらの現象にもひどく関わりがあり、あっというまに耐性を造ってしまうのです。そうなると1度あたりの投薬量も毎回増やしていかないと効果が出にくくなり、身体にかかる負担も必然的に大きくなっていきます。なので私はここぞという場面以外では極力処方しないようにしているのです。この耐性の働きは薬物に限らず、酒、タバコなどの嗜好品でも同じことがいえます」
先ほどの神降し云々の話を聞かなければ、とてもまともな良心的な名医と思えたのだが、わたしはいま、このインタビューをどうまとめるべきなのか、頭を悩ませている。

別の科に勤める同期の医師に話を訊いてみた。
「最近のアイツのことを"ちょっとどうかしている"というひとたちもいるけど、アイツは元々、ああいうヤツだったんだよ」
彼の口から出たのは意外なことばだった。
「聞いただろうけど、"神降し"云々も本当の話でアイツの家は20代以上にわたって、時の権力者たちに影響を与え続けてきた、いわば神降しの名家なんだそうだよ。ウソか、ホントか、現在でも近隣の県知事や大臣なんかが話を聞きにわざわざ此処に"診療"に来てるってんだから、イヤになるよね」
立て続けに絶句することば。
「実のところ、オレはアイツの現在のキャラクター、あれ、ワザとだと思ってるんだよね。この前、いっしょに食堂でメシ喰ってた時もアイツ、"なかなか良いだろ、いまのオレのキャラ"て言ってたからね。たしかに本当に狂ってしまうヤツも精神科医には少なくないけど、アイツの場合は設定を上手く利用した確信犯てのが、ほんとのとこだろうね。悪いヤツだよ、ほんと、ハハハ」
笑いながら、わたしの心の靄(もや)を見事に晴らしてくれたこの医師のことば。わたしはもうすっかり、優秀な精神科医、彼の信者となっていた。



断片小説第2弾は、精神科医の話です。
医療知識(特に耐性云々)に関しては、うろ覚えの記憶からの適当な説明なので、詳しくは各自、自己責任で勉強してみてください(笑)
たぶん次は、死んだオヤジが帰ってくる話"父カエル"をやると思う たぶん、気が変わるだろうけど(笑)
ん、"ドラキュラのたわごと"なんてのもおもしろいかも(謎笑)

ひとりは、ちゃんとコメント書いておくれよ でないとモチベーション落ちて三日坊主に・・・ニヤリ
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by AMNESIac7 | 2008-12-04 19:46 | 断片小説