逸脱せよ!


by amnesiac7
カレンダー
S M T W T F S
1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28

わが悲しき娼婦たちの思い出

大まかすぎるあらすじ
90歳にもなって、人生に初めて訪れる狂おしいほどの春
14歳の生娘、デルガディーナ(じいさんが勝手に命名)に寄せる、甘く切ない老人の恋
妄想と現実が溶け合って、いついかなるところにもデルガディーナが現れる
ふつうの人間なら、とっくにあの世に旅立っている年齢を迎えて始まった人生の讃歌

マルケス作品の特徴
マルケスの小説がたまらないのは、出てくる登場人物たちの多くが、なにかに狂っているところにある
情熱の炎が強すぎて、ほとばしり、遂には吹きこぼれるキャラクター
たとえ90歳の老人を主人公にしようとも、そのエネルギーに変わりはなかった

娼館の主、ローサ・カバルカス
そもそもボクの人生の辞書には、「娼館」などということばは存在しないので、どうしてもあの妖怪じみたピラル・テルネラ(『百年の孤独』)を思い出し、デルガディーナはレメディオス(昇天)
マルケス特有の読者の平衡感覚をズルズルと引きずりまわす文体と相まって、傑作『百年の孤独』で味わったあの感覚をふたたび蘇らせることに成功している

天才作家A
「ガルシア・マルケス旋風」と題して寄せられた大江健三郎氏の推薦文
「(30年ほど前)まさに天才だった作家Aさん」という表現で語られている人物は、「マルケス、大江」というキーワードから、安部公房のことをさすということは容易に推測できるはずだ
どうやら大江は、英語がなぜかダメな安部に訳して読んで聴かせたようである
(ほとんど強制的に安部に朗読させられた、という表現のほうが適当か)
翌日の夕暮れにようやく読み終え、マルケスを「世界の時代を描く男」と評し、酒宴へとなだれこむ
安部をして、これほど手放しで賞賛されるその物語、真髄を知りたくば、やはり『百年の孤独』から読むべきだろう 2度でも、3度でも

いまなお燃え続けるマルケスの炎
77歳を迎えてもなお、燃え続けている男、ガルシア=マルケス
主人公の老人の心情を描写するなかでも、数々と垣間見える自負と情熱
いまだ生への強い執着を持ち、まだまだわしは生きてやるぞ!と高らかと宣言するがごときの今作は、定年を迎えただけで早くも日和ってしまっている、この国の多くの60代にこそ読ませたい
老いる肉体にくやしさすらにじませるエネルギッシュな作品である

これから発売されるマルケスの全小説
新潮社が思い切った勝負にでた マルケスの全小説刊行に踏み切るというのだ
なかでももっとも目を引くのは、08年発売予定の『自伝 語るための人生(仮)』なわけで、まだまだとても「過去のひと」となる気配はいっこうに見せない(『迷宮の将軍』てのも気になっているが)
再新装版となる『百年の孤独』の表紙は、今度はどんな風になるのだろうか いまから期待である

みながみな、相手の感情を無視し、強引に自分の世界へと現実を手繰り寄せていく
エネルギーの塊のような世界だが、現実の無機質な泥沼よりもよっぽどの充足がここにはある
たぶん、筒井のおやっさんもまた燃えるんじゃないかなぁ(笑)

追記:「全小説」といいながら、『青い犬の目』とか『誘拐』とか他にもいろいろ抜けてないか?
うちの本棚にはすでにあるからいいけどね(自慢、かなりの自慢w ただし、まだ「寝かせ」中^^;)
[PR]
by AMNESIac7 | 2006-10-03 21:28 | 読書感想文独書