逸脱せよ!


by amnesiac7
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のらいぬ

吾輩はノラ犬である。名前は未だない。
野良と呼べるほど、野を思うままにしてきたわけでもなければ、勝手きままに暮らせてきたわけでもない。
とりわけ近年の管理社会強化の風潮とやらには、嫌気がさしている。
吾々は、常に所属を問われ、自らだけで由(よし)とすることを許されず、監視の目にさらされている。
さしあたって、ノラ犬たる吾々がいつも問われるのは"首輪"の有無である。
人間に飼われているのか、いまいかの目安となる、この記号の有る無しは、生存にも直接関わってくる重要な案件である。
若き日の私は、これ無きがために生命の危機に直面した経験が幾度となくあり、実際に囚われ、人間に殺された(という)仲間たちも多数いた。
齢十五を超える私が、未だその生命を保てているのは、10数年前に出遭った或る男のおかげである。

男は人間であり、その生命体としての年齢でいうところの50歳を超えたあたりの者であったと思う。
男と私はとある深夜の公園のベンチで出逢い、男の愚痴などを聞き、一夜をともにした。
翌朝、眠りからも酩酊からも醒めた男は、一晩を公園のベンチで過ごし、どうやら横で様子を伺う私に何やら絡んでいたらしいことに気づき、てれくさ気に私の頭を撫で、急に何かを思いついたらしく、もつれながらも、駆け足気味で公園から出ていき、しばらく帰ってこなかった。
私は、突然去っていった男に多少の困惑を覚えながらも、水道付近で落ちて溜まった水を舐め、これからのことを考えた。
次に男の姿を見たのは、大きな黄色のヴィニル袋を手にし、満面の笑みを浮かべ、私のもとへと駆け寄ってときで、私も思わず、反射的に声を上げていた。
男は、一晩の御礼だ、と言い、私に赤い、頑丈そうな首輪をかけた。
私は、この男に飼われるのかと、かすかな甘い期待を抱いたが、男は、これでもう大丈夫だろう、と私から離れていった。が、すぐに戻ってきて、私の首輪から何かを取り出し、それを弄りまわした後、再び私のつける首輪に戻し、頭をポンポンと二度ほど叩き、去っていった。
そのときの私は、ただただ悄然とし、途方に暮れる思いであったが、後々になり、仲間たちが捕まるたびに、男のしてくれたこと、首輪の授与に感謝したものである。

あれから長い歳月が経ち、私は老犬と呼ばれる歳になり、赤い首輪も同じく老いくたびれ、半分ちぎれかかってきている。
最早、人間に飼われている(かもしれない)という設定にも支障をきたすほど、吾々は時間の風にさらされ過ぎてしまっていた。
現在、私の眼前に立つふたり組は、幾度となく、私のひと時の仲間たちを刹那的に葬り去ってきた団体に"所属"する者たちであるらしい。

「う~ん、さすがにこれで飼い犬ってことはないだろ?」
「でも一応、首輪はしているわけだから確かめないわけには・・・」
「う~ん、コイツ噛まないだろうな?」
「野良だったら噛むんじゃないですか?」
「じゃぁ、オマエが調べろよ」
「イヤですよ!」
毛並みも悪く、ヨボヨボな老犬を相手に、保健所の人間らしい二人組が、押し合いへしあい。
結局、先輩らしき男の方が、意を決して老犬の首輪に触れるも、老犬は、うな垂れるようになんら抵抗することなく、男に首輪を奪われた。
「どれどれ・・・コイツはどこのどなたの犬だというのだ?」
「読めますか?紙、かなり古くなってるんじゃないですか?」
男たちは、首輪の中に差し込まれている、飼い主たちがその住所などを記すメモ紙を見つけ、老犬もそれに反応し、その紙片をフルフルとだが、静かに眺めている。
「ははは、コイツは良いや」
「ん、なにか変わったことでも?」
「おい、これ見てみろよ」
「なになに・・・なまえ:風天たろう 住所:この世のすべて、或いは最後の楽園・・・」
「完全に野良くんですな、こりゃ」
「連れて帰るんですか、コイツ?」
「しょうがないだろ、近隣住人とやらから苦情が出てるんだから」
「連れて帰っても薬殺しか"道"がないんじゃないですか?」
「それまた、しようがない話だよ」
「・・・じゃあ、うちで飼いますよ」
「またかよ、オマエ!」

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いったい、オレは何を書いているんだ?(笑)
最近、ノラ犬とやらを全く見なくなったなぁ、と思い、こんな話をつらつらと・・・
というか、すっかり忘れていた"断片小説"のコーナーの存在
「最近、ぜんぜん書いていないね」とひとに言われて、初めて思い出した^^;
まぁ、どうせ、思いつきで、話の筋もほとんど決めずに、流れるままに垂れ流すコーナーなんで、
また思いたったら・・・ですな
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by AMNESIac7 | 2009-05-08 16:00 | 断片小説