逸脱せよ!


by amnesiac7
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2007年 08月 12日 ( 1 )

祖母の死

父方の祖母の死

8日 「いま危ない状態にある」_親戚のおばさんからの連絡
    すぐさま病院に急行するも、間に合わず、すでにバイタル・サインは全停止状態
    近隣の親戚が揃うのを待って、死亡時刻の確認
    (ログを見ると実際の心停止時刻よりも90分以上遅かった)
    実のところ、前々から「人間の生命が停止する瞬間」を一度は見ておきたいと
    思っていたので、機会を逸したことを不謹慎にも悔やむ
    容態の急変ではあったものの、以前より「回復の見込みはない」とされていたので、
    葬儀屋などへの連絡、手配は至ってスムース
    しかし、実際に葬儀場に着くと「立て込んでいるので、1日遅らせれないか?」との打診
    夏の暑い盛り、腐食などを考えると早い方がもちろんよく、論議していると、
    顔の効く縁者が、近くの寺を手配
    移動すると、なかなかに立派な施設を持つ寺院
    これはけっこう高くつきそうだ

9日 通夜 仕事を休み、お昼ごろから手伝いに
    到着すると、偶然、祖母を死装束(?)に着替えさせるタイミングに遭遇
    叔母たちの手際はイマイチで、けっきょくボクが手伝うことになった
    有機物から無機物へと変化してしまった肉体
    身体中の連絡線、すべてが断ち切れ、弛緩しきったそれを手にしての作業
    丁寧に、しかも黙々と
    一部始終を見ていた親類縁者は、あとになって「なかなか出来ることではない」と
    感心し、しきりに誉めそやしていたが、ボクのなかでの真実とは、大きな乖離があった
    無感動に、ここぞとばかりに集中しながら、感触を、ひとつひとつ確かめる
    そこには愛情の欠片も認めることはできず、まったく揺れない自分に困惑をおぼえるほどだった
    母方の長兄が亡くなったときは、けっこう涙したはずなのだが、ここまでのところ、
    一滴の涙もなし だいじょうぶか、オレ?

10日 本葬 朝からお寺
     粛々と進められる葬儀
     父方の親戚は、あまり号泣するようなタイプの人間はいず、すこし安心していたが、
     やはり、儀式が段階を踏むごとに、徐々に涙ぐみ、なかにはわずかに声を漏らす者も
     出始める
     葬式の儀式は、死者よりも生者のためにある
     と指摘していたのは、安部公房だったと思うが、まさにそのとおりで
     皆、儀式が進むにつれ、死者との感情の清算を円滑にこなしていった
     そして、ここでの涙とは、清算の通行手形であり、
     ボクには未だその免罪符の発行が許されていない
     ボクよりも、はるかに縁薄い、ほとんど無縁ともいえる縁者たちにも乱発されている
     ような手形なのに、ボクはこの段階でも未だ、それを手に入れることができていない
     手形を捏造する材料、「思い出」という記憶
     その材料に「感情」を加え、各自、好き勝手な手形を発行する
     ボクにも、もちろん祖母との思い出がないわけではない
     おそらくというか、どうやら「感情」が希薄すぎたようだ
     そんな孫が火葬場までの遺影を持つ
     眉をひそめて、神妙の顔つきをしているが、腹のなかはただの困惑、気まずさだけが
     その大半を占めていた

     火葬場 数十とあるオーブンのひとつの前で最後のお別れの話
     なんら面識のない人間が、死者の生前の徳を讃えたりしながら、
     終電のプラットホームでラスト・チャンスの笛を吹く
     冷静をつとめていたひとたちも、絶句しながら見送り、肩を微動させた
    
     焼け上がるまでの2時間ばかり、食事休憩
     あまりダレも祖母の話題を口にせず、遺影に目をやるひともわずか

     ふたたび火葬場 すべてが灰となり、骨だけになっていた
     さすがにすこし揺れそうになったが、その骨の予想以上の細さ、もろさと
     なぜか左に寝返りをうったような姿勢で出てきたことに、関心が逸れた
     死の直前に脳梗塞を起こし、左半身が不自由になっていたことを思い出し、
     変な姿勢で焼き上がったことと照らして想像を巡らせていると、
     あっという間に骨上げの段階に入っており、虚を突かれたように箸を受け取る
     細く、脆くなった骨を壊さないように、注意を払いながら骨壷に入れる
     相変わらず神妙な面持ちだが、目ざとい人間なら、オレが一度も涙を流していない
     ことに気づいているはずだ、と周囲に神経を尖らせた
     我ながら、「どこまで酷薄なのか」と思いながらも、もし、このことを洞察している人間が
     いたら、「そいつもオレと同じくらい」だと考えがおよび、すこし気が抜けた

     寺に戻り、簡略化され、葬式の日とセット化された初七日の法要の儀
     これは葬式という儀式においては、ほとんどピロー・トークのようなものらしく、
     淡々と執り行われ、つつがなく終了 適当に軽く飲食などをして、散会
    
余談 けっきょく涙の一滴もなく、ボクにとっての清算の儀式は終わってしまった
    祖母は、ボクの父を若く(30歳に)して亡くし、その分、ボクには彼女なりの愛情を
    たくさんと注いでくれていた
    しかし、今となれば自分の遺伝的性格からも照らしてわかるが、彼女はシャイで、
    しかも、字も読めなかったので、孫との交流の糸口を(本意ではないのだろうが)金銭などに
    頼ることが多かった
    そして、その金額は父の兄弟などからも含め、
    母子家庭となったボクの家には大き過ぎる「負担」だった
    本来、こちらも返せる範囲の贈り物ならありがたいものだが、贈り物も過大になると、
    それは受け手にとって「負担」と変容してしまう
    ボク自身が現在、バリバリと稼いでいれば、違った感情も起こったはずだし、
    援助が少なければ、それほど負い目もなく、易く涙も流れたかもしれない
    父は長男だった 式の最中も「これからはオマエがこの家を背負っていくんだぞ」と
    縁者たちは当たり前のように言ってきていた
    ボクにとっての「負い目」はまだまだ清算されることはなさそうだ
    不甲斐のない自分がため、まともに、当たり前に泣くこともできないような立場も、
    「感情」にブレーキをかけたのだろうな

余談2 それにしても葬式はおもしろい
     今回は、イヤなほど醒めていたので、いろんな光景を観察することができた
     信心が篤いため、儀式のひとつひとつに声をあげ、ひとり浮いている者
     ビジネスの困窮からか、なんとか有力な人脈に渡りをつけようとほぼ無縁なのに参列する者
     ほとんど疎遠なのに、同伴者の涙に釣られ泣きする者
     坊さんの言葉などを、どうしてもダジャレなどに変換したがり、顰蹙を買う者
     他人が焼香中なのに、ベラベラと自分の話をする者
     自分だけが面白いと思っている、なにひとつ面白くないエピソードを披露する者
     あまりにも、あまりにも
     まるで葬式という演劇には、かならずこういった配役が存在します、といった風情だった
     ボクがいままでに参加した数少ない葬劇にも、やはりこれらのトリックスターは存在した
     「もし、ダレもいなければ、ワタシが演技しなくっちゃ」とでも、みんな思っているのだろうか?
     他にも葬式ならではの決まり文句のオンパレードがあり、自分がえらく安い台本の芝居に
     参加させられているのではないか、という疑惑も、ひょっとしたらボクの感情のブレーキと
     なったのかもしれないが、これは他人への責任転嫁に過ぎるので、やはり取り下げておく
     
     ちなみにこの滑稽を「おもしろい」と表現したのは、最近のボクの笑癖のひとつに、
     「スベっている芸人を見て笑う」というのがあるからだ
     本人の本気っぷりと、そのおもしろなさ それを冷ややかに眺める観客
     ここでいう芸人の最たる者は、最近の政治屋や権力者たちか
     今までは完全にスベっているのに、ツッコむこともなく、なぜか感心しているような
     タコの観客動員が多かったが、さすがにもう、それではクスりともできないような世相に
     まで追い込まれてしまったおかげで、ようやくまともな演劇がチラホラと観賞できるように
     なってきた 善き哉、善き哉
     (えらくヘンな「締め」になったな でもコレがオレ節?)
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by AMNESIac7 | 2007-08-12 22:20 | 日記