逸脱せよ!


by amnesiac7
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死に急ぐ鯨たち

たまに、年に2・3回ほど読み返したくなる本がある
安部公房著の『死に急ぐ鯨たち』もそんな本のなかの1冊だ
安部公房特有の事象を深くえぐる洞察力、思考力、展開力は、評論においてもっともその力を発揮する
そして、いくつかある彼の評論集の中でも、この『死に急ぐ鯨たち』の読み応えはたまらないものがある

シャーマンは祖国を歌う 儀式・言語・国家、そしてDNA』をひさしぶりに読んだ
この評論は、みずからが書いたSF小説『第四間氷期』に関するさまざまな意見の考察からはじまり、反技術主義に対する考察、『ことば』の構造、ことばの獲得によってひとは何を得て、何を失ったのか、シャーマンによる儀式、権力の楕円構造、集団化によることばの眠り・・・などに話が展開されていく 何度読んでも深くうなずかされる鋭い論説である

慢性化した「集団化」中毒患者は、国家儀式の肥大化にも、ほとんど気をつかわなくなるでしょう。
「分化機能」としての《ことば》は家畜小屋に閉じ込められたっきり、肉や卵の生産にはげむだけで、牙をむくことなどとうに忘れてしまった様子です。国家は無限に集会所として野放図な広がりをみせ、その権威は無条件に美化され、政策批判はともかく国家の存在理由を問うことはいまや「いかがわしい」行為とみなされる。 ~(中略)~ あまりにも強い国家への帰属感のせいで、敵のない世界の可能性など信じられなくなってしまったのでしょうか。(文中より抜粋)
この文庫は、ざんねんながら現在、絶版とされている
出版元の新潮社の見つめる方向とは、あまりにもかけ離れた、そして危険な意見だからだろう
ことば(思考力)を失わせ、集団化を煽るような出版物を乱発する会社から出すには似つかわしくない
おそらく、安部氏の存命中においても、イヤイヤ出版していたのではなかろうか

ぼくは、この文庫を古本屋で見かけるたび、かならず購入するようにしている
いままでに4冊買い、うち2冊をひとにあげ、うち2冊を現在も所有している
みんなに読んでほしい1冊である

※そういやバレンタイン・デーて、ヨーロッパでは好きなひとに本をあげたりする日らしいね
日本もチョコじゃなくて、みんなで本を交換する日になればいいのにね

ちなみに『死に急ぐ鯨たち』に含まれている評論、タイトルだけ紹介しておきます(*- -)(*_ _)ペコリ

Ⅰシャーマンは祖国を歌う
Ⅱ死に急ぐ鯨たち
 右脳閉塞症候群
 そっくり人形
 サクラは異端審問官の紋章
 タバコをやめる方法
 テヘランのドストエフスキー
Ⅲ錨なき方舟の時代
 子午線上の綱渡り
 破滅と再生 1
 破滅と再生 2
Ⅳ地球儀に住むガルシア・マルケス
 「明日の新聞」を読む
 核シェルターの中の展覧会
(解説 養老孟司)

ボクはこの文庫によりチョムスキー、カネッティ、マルケスと出逢った
それだけでもすばらしい財産である
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by AMNESIac7 | 2005-02-20 15:48 | 読書感想文独書