逸脱せよ!


by amnesiac7
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モノは死なない、最初から生まれてもいないから

「オレは自殺する」と毎日唱えていた男が殺された。他人に。
しかし、あまりにも自殺をほのめかし続けていたので、彼の死を、誰も他殺とは考えなかった(それが
かなり不審な死に方であったにも関わらず)。
もちろん、彼は化けて出ることを選択する。黙っているわけにはいかない。死者の告発だ。
だが、それもうまくはいかない。なぜなら、周囲に彼の死に違和感をおぼえた者がいなかった為だ。
霊体を得るためのエッセンスが、あまりにも不足していた。
彼は焦った。このままでは完全に消えてしまう、と。
そもそも、自分がなぜ死にたがっていたのからすらも、死の数分後には、忘れてしまっていた。
輪郭が見当たらない。そもそもオレは生きていたのか?
そもそも・・・"そもそも"とは何だ?
そもそも、ここまでの、いち生涯の、流れに、何かわずかにでも"意味"があっただろうか?
そもそも、オレの人生は・・・"オレ"とは、何だったのか?

風が吹いて、命が流れた。
風が吹いても遺るのは、生命だけだ。
この街はまるで荒野だ。
何も存在しないし、これからも何も遺すまい。

眼をひらく。街そのものが霧散していた。
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by AMNESIac7 | 2009-10-05 18:34 | 断片小説