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逸脱せよ!


by amnesiac7
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空白

「ぼくには どうして おとうさんがいないの?」
ふいに、しかし、なぜか予感のあったセリフ。どこか懐かしい瞳を持った少年の。
ゆるい光が漏れ落ちる木蔭。のベンチ。読書。
視線。屈託のない、だが、どこかさびしげな笑顔。4・5歳。
となりに這いあがり、ちょこんと腰をおろし、おしゃべり。
打ち解けるのに、さほど時間もかからず。端から打ち解けて。
空の話。風の話。光の話。おとなしい媚び。
「そうだなぁ、お母さんは何ていってるの?」
一瞬の間。
「おにいちゃんが おとうさんだったらよかったのに だって」

病室。そっくりな瞳。ぼくに。僕に。
ベットに横たわるのは、6年前、実家を飛び出し、消息不明だった僕の妹。
「ひさしぶりね、お兄ちゃん」
空白を埋める様々な想像。意味を成さない憤り。あふれ出す感情。
「悪いんだけどさぁ・・・ここの入院費、立て替えてくれない?」

駆け落ちした相手の男とは、とっくにお別れ。今回は"ただの盲腸"だそうで。
by AMNESIac7 | 2009-09-10 18:50 | 断片小説