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逸脱せよ!


by amnesiac7
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『復興期の精神 -花田清輝著-』

< ブリダンの驢馬 -スピノザ- >
花田清輝の評論、スピノザの引用でおもしろいものを見つけた。
「嫉妬とは、手に入れた或る物を単独に享楽し、保持しうるためにいだく心配である」
これはスピノザ初期の『短論文』に記されている、嫉妬についての定義なのだそうだが、読んだ瞬間、思わずうなってしまった。
この引用は、後に『倫理学』で品位をかなぐり捨てた表現で、ふたたび嫉妬についての語っているものを誉めるために用いられたものだが、ボクはこの初期の一説に得心した気になり、共感を覚えた。

花田は、この評論でスピノザをはじめ、いくらかの思想家たちの説に鋭利な刃物を突き立てていく。
スピノザの説を、生前の彼の生活基盤がブルジョア的位置にあったのではないかということに思いを馳せ、いまを生きる今日とはすこしばかりの乖離性があるのでは、と疑念をはさむ。
その他の思想家たちの説にも同じ姿勢である。
こう表現するとまた誤解を生むかもしれないが、花田はまず全てを疑ってかかる性質にあったようだ。
世界的法則や権威なぞに捉われず、まず自分もその事象を吟味する。
その理解のために、まず現行の説に穴がないか鋭いメスを加えていく。
まず、この説ありき、と何も疑わない、自分で考えることを知らない諦念的バカちんではない。
思索の姿勢とは、そういうものなんだろう。彼は次々と古今の思想家の定説に、鋭い視線を浴びせかけていくが、なにも決して完全否定しているわけでもなければ、自分の説を全面的に信じているわけではないだろう(断定的な書き方が多いゆえに、誤解されることも多かったかもしれないが)。

読んでて、クスクス笑った。かなり感性的に共感を覚えたw
強い口調で語っているが、双方向において すべてを信じているわけではない。
ただひとつ、はっきりとしていることは、思索原点が、いまを生きるための思索、どう現実にフィードバックしていくか、にあるというところではないか。
読後感が、なかなかオツな評論でありました、ハィ(文章の難解さは、それが思索であるがためだろう。決め撃ちされた評論というわけではないので)
by amnesiac7 | 2004-11-17 18:56 | 読書感想文独書